エトワール・エトセトラ

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宝塚大劇場月組公演「万華鏡百景色」:美しさと妖しさという灯、レトロとモダンの万華鏡(ネタバレあり)

先日、宝塚大劇場月組の「フリューゲル-君がくれた翼-」「万華鏡百景色」を観劇しました。

まず、ショー「万華鏡百景色」の感想を綴っていきたいと思います。(時系列バラバラかもしれませんが。大まかな場面ごとに感想を述べていきます。)

 

ネタバレしていますので、お気を付けください。

 

 

 

すごく美しい世界観で、好きなショーでした。すごく理想的なショーでした。

 

はじめの、少女(花妃舞音)が万華鏡を手にするシーンから万華鏡百景色の妖しくも美しい世界観へ誘われました。

ちなつさんを中心とした付喪神の登場からドラマチックに花火師(月城かなと)花魁(海乃美月)の出会いと別れが繰り広げられ、一気に引き込まれました。

付喪神おだちんぱるみちるちゃんをオペラで追っていました。硬質なかっこよさでした。アレンジされたかごめかごめと番傘を使った振り付けもお洒落で、引き離される花火師と花魁の運命を物語っていました。

あと、花火師のれいこさんのビジュアルが圧倒的美すぎた。すごく好きなビジュアルでした。花魁の海ちゃんの足さばきもさすがでした。

万華鏡百景色の主題歌も妖しさもありつつも洗練されていてとっても美しい旋律と人生の悲喜と鮮やかな彩りと時の移り変わりを万華鏡になぞらえた歌詞で素晴らしかったです。そして、色とりどりの人々が個性豊かに輝いていました

 

おだちんのガス灯のシーンも良かったです。おだちんの歌も素敵でした。文明開化に沸き立つ当時の人々の喜びを想像しました。父と子たちも微笑ましくて、はしゃぐ子供たちが可愛かったです。

 

続く、鹿鳴館のシーンも素敵で、れいこさんの軍服姿がかっこよかったです。

 

モガとモボのシーンでは、ぱるみちるあみりりの2組のカップルが明るく軽快な仲睦まじくて可愛くて素敵でした。後ろにいるマネキン(雅耀、八重ひめか、乃々れいあ)たちが皆さん麗しくて目を奪われました。特に乃々れいあちゃんがものすごく可愛かったです。

 

爽やかで明るい場面から打って変わって、妖しくも不穏な地獄変へ。モガとモボのシーンから上手く地獄変につながっていくのがすごい。

一心不乱に物語を描く芥川龍之介(鳳月杏)が自分の描く物語に取り込まれていくのですが、ちなつさんの美しさと気迫がすごかったです。命を削って物語をつくる芥川と傑作をつくるがために娘(天紫珠季)をも犠牲にしてしまう良秀が重なりました。命を賭けて作品に懸ける思いの強さと表現者に執念を与える作品の恐ろしさが体現していました。娘が何も知らぬうちに最高の作品をつくりたい良秀と何の躊躇もない大殿(蓮つかさ)によって殺されてしまうのがむごかったです。

ダンサーの業たちから炎だけでなく良秀(芥川)の執念、娘の無念と苦しみが伝わり、良秀と娘、大殿と相まってすごいシーンを見たと思いました。るねさんのダイナミックなダンスとその存在感が業、炎そのものでした。

 

闇市のシーンでは、闇市のドンであるれいこさんのゴージャスさと裏社会の生きる男の恐ろしさ・食えなさがとても印象的でした。不良警官のおだちんとの歌は戦後という大変な時代でも明るくしたたかに生きようとする人々の強さを感じました。

娼婦の海ちゃんの酸いも甘いも嚙み分けた色気と哀しさが美しかったです。混沌として危険な闇市に白い衣装の幻想の男女の清らかさ爽やかさが際立っていました。強かに生きる人々、そして、ドンと娼婦の根底には幻想の男女(彩音星凪、美海そら)のような美しく清らかな心があるのだと。それが、戦争という大きな炎が人々を引き裂いた。芝居のフリューゲルとも通じていて、戦争は人の命だけでなく、心さえも繋がりでさえも曇らせ引き離してしまうのだと感じました。

 

時代は流れ、シティポップの時代へ。

軽快でおしゃれなナンバーの数々は新しさを感じました。”DOWNTOWN”ではれんこんさんに釘づけでした。

中詰めのメインシーンは客席降りがすごかったです。絶景でした。私が見た席はほぼ真ん中(やや左)だったので、れいこさんとれんこんさんが近かったです。れいこさんを近くで見れて幸せでした。本当に美しかった。あと、れいこさんがれんこんさんに駆け寄りハグしていて可愛くて胸キュンでした。

ロケットも華やかでした。

 

そして、現代に時は進みます。

Z-BOYSのストリートファッション・ダンス・歌すべてが最高にクールでした。ぱるあみがすごくよかったです。これがコンビ萌えというものでしょうか。

渋谷のシーンではKing Gnu「Tokyo Rendez-Vous」という楽曲と満員電車に揺られる現代人とその光景を見下ろすカラスという構図がいかにも現代でありながら、現代のゆがみがどこかSF小説ディストピアのようでした。カラスたちがまるで現代を人間を操る、支配する存在に思えました。

カラスのれいこさんも冷たいどこか異界の美しさでした。対照的に或る女の海ちゃんの飾り気のない服装が彼女の清楚さ透明感を際立たせていてお似合いでした。(闇市の場面の衣装もお似合いでした。)

 

そして、フィナーレからデュエットダンスも素敵でした。輪廻転生を繰り返し、出会い、すれ違ってきた花火師と花魁がやっとめぐり逢えた多幸感があるフィナーレでした。

椎名林檎さんの「目抜き通り」もこの場面にマッチしていて、閉塞感があって、薄暗い世の中だけど、人生という灯はともされつづけ、輝いていると希望を持てる作品でした。

 

King Gnuも大好きですし、椎名林檎さんの「目抜き通り」も大好きなので最高でした。

明治大正時代が舞台の話(龍の宮物語やはいからさんが通る)が大好きなので、今回は最高でした。月組との親和性が高く、今の月組だからこそできるショーだと思いました。栗田先生の他の作品(夢千鳥とカルトワイン)をぜひ観たいです。

 

今回の演目ですごく礼華はるさんと彩海せらさん、きよら羽龍さん、乃々れいあさん、そして、風間柚乃さんが気になりました。

海乃美月さんの上品な美しさとダンスの素晴らしさ、そして月城かなとさんの圧倒的美と情緒豊かな歌声が最高でした。

 

今日は月組の宝塚千秋楽でしたね。東京も完走できますように。